~友だちのうちはどこ?~ 東京ラスク社員が紹介する おやつの時間におススメな映画 Vol.8

~友だちのうちはどこ?~ 東京ラスク社員が紹介する おやつの時間におススメな映画 Vol.8

皆さん、こんにちは!
いつも東京ラスクオンラインショップをご利用いただき、誠にありがとうございます。

東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。

映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。





○友だちのうちはどこ?(1987年製作)



スタッフ・キャスト

監督:アッバス・キアロスタミ


アフマッド役:ババク・アハマッドプール
モハマッド役:アハマッド・アハマッドプール

~あらすじ~
 イランの小さな村。主人公の少年アフマッドは、学校から家に帰る途中、間違って友だちのモハマッドのノートを自分の鞄に入れてしまいます。モハマッドは宿題をノートにやってこないと退学になる、と厳しく先生から注意されたばかり。
 アフマッドは、そのことに気づき、友だちにノートを返そうとします。しかし、モハマッドの家はどこか分かりません。場所もよく分からない隣村・ポシュテケシュ村へ、夕方の限られた時間の中で向かいます。その過程で、様々な大人や子供に道を尋ね、時に助けられ、時に手がかりを失ってしまう。


第8回では、イランの名匠アッバス・キアロスタミ監督による、淡々としながらも強い生命力と誠実さを描いた名作を紹介します。

小さな村を舞台に、ひとりの少年が友だちのために全力を尽くす姿を通じて、子どもの純粋さ・社会の仕組み・日常の中の優しさを感じ取ることができます。

◆見どころポイント◆


①子どもの視点を貫き通す誠実な描写

 本作でもっとも印象的なのは、徹底して子どもの視点に寄り添った描写です。監督のキアロスタミは、大人たちの都合や社会的な理屈を排し、アフマッドという少年のまっすぐな感情や動機、そのひたむきな行動を軸に物語を進めます。

 アフマッドは「友だちを助けたい」という思いから、夕暮れの村をひたすらに走り回るのですが、その純粋な動機がカメラワークや静かなカット、余計な説明のない演出によって強調されます。観客は彼の目線、彼の歩く速度や息づかいを通して、子どもの世界の真剣さや切実さを体感します。

 子どもが持つ倫理観は、時に大人の社会の論理を凌駕し、アフマッドの行動は周囲の無理解を前にしても揺らぐことがありません。その在り方が、観る者に「本当に大切なものは何か」を静かに問いかけてきます。


②家族と村社会のリアルな空気感

 もう一つの大きな見どころは、イランの地方村落ならではの暮らしや人びとの息づかいが丹念に描きこまれている点です。
 アフマッドはモハマッドの家の場所を知るために大人たちに何度も尋ねますが、多くの場合、忙しさや「そこまでしてやらなくてもいいだろう」という無関心に突き当たります。

 村人たちは、決して冷たいわけではないのですが、自分たちの日常を優先し、子どもの訴えにはどこか鈍感です。そうした距離感がとてもリアルに映し出されており、社会の中で小さな善意や配慮が見過ごされていく様子が、どこか現代日本にも通じるものとして映ります。

 一方、アフマッドの祖父や、道中出会う大工の老人など、ふとした会話や態度のなかに人間的な優しさや温かさも滲み出ています。全員が善人でも悪人でもない、生活がにじみ出す土地と人々の感触が、映画全体から立ちのぼります。

 村の風景や自然の音、夕暮れの空気感までもがリアルに刻まれており、観る者は異国の土地に身を置くような感覚を味わえるはずです。


③ 日常のなかの静かなドラマと希望

 『友だちのうちはどこ?』は一切大げさな事件が起きない作品ですが、日常のなかの小さな困難に出会い、それをどう越えていくかにこそ大きな感動があります。

 アフマッドは何度も諦めかけ、絶望しながらも、最後には自分なりの工夫を凝らして友だちを助けようとします。その過程は平凡な毎日の延長線上にありながら、観ている私たちの感情を静かに揺さぶります。

 特に終盤、アフマッドが取るささやかな行動や、朝の登校時に交わされる無言のやりとりなど、言葉にならない希望や連帯が強い余韻を残します。きっぱりした解決もカタルシスも用意されていませんが、人生の困難を前にどう希望を見いだしていくかという、普遍的な問いを投げかけています。
 観終わったあと、日常を生きる勇気や、他者とのさりげないつながりを大切にしたくなる作品です。



まとめ

 『友だちのうちはどこ?』は、子どもならではのまっすぐな誠実さや、身近な社会の現実、そして日常の中に宿る小さな希望を丁寧に描き出した珠玉の一作です。余計な装飾も説明もなく、観客自身の感性に語りかける静かな映画ですが、その分じっくりと自分の置かれている日常や、他者を思いやる気持ちについて深く考えさせてくれます。

 一見平凡な出来事の積み重ねが、実は人生にとってとても大切なものであることーそんな普遍的なメッセージが、イランの小さな村の一日を通して私たちの胸に残ります。

 それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を

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