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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
第65回では、バスティアン・ヴィヴェスのバンド・デシネ『年上のひと』を原作に、14歳を迎える少年と16歳の少女の忘れられないひと夏を綴り、世界中の映画祭を席巻した青春ドラマを紹介します。
典型的なボーイミーツガール映画だと侮るなかれ、想像を遥かに超える物語になっています。
美しく繊細で儚い、そんな青春期を見たことのない切り口からみずみずしく描いた作品です。
○ファルコン・レイク(2022年製作)
スタッフ・キャスト
監督:ショーン・ベイカー
バスティアン役:ジョゼフ・アンジェル
クロエ役:サラ・モンプチ
~あらすじ~
ある夏の日。まもなく14歳を迎えるバスティアン(ジョゼフ・アンジェル)は、両親と歳の離れた弟と共にフランスからカナダ・ケベックにある湖畔の避暑地へとやってくる。そこは2年ぶりに訪れる湖と森に囲まれたコテージで、母の友人ルイーズ、その娘クロエ(サラ・モンプチ)と数日間を一緒に過ごすことに。久しぶりに再会したクロエは16歳になり、以前よりも大人びた雰囲気。桟橋に寝転んでいたクロエは服を脱ぎ捨てると、ひとり湖に飛び込む。泳ぎたがらないバスティアンに「湖の幽霊が怖い?」とクロエが言う。大人の目を盗んで飲むワイン、ふたりで出かけた夜のパーティー……。自分の知らない世界を歩む3つ年上のクロエに惹かれていくバスティアンは、帰りが迫るある夜、彼女を追って湖のほとりへ向かうが……。
引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv81516/)
◆見どころポイント◆
①よくある青春設定を超え、思春期が「生と死」を覗き込む物語
別荘の夏、少し年上の憧れの人との距離が近づく-一見するとよくある青春映画の設定ですが、『ファルコン・レイク』はその枠を軽々と飛び越えます。
物語は淡い恋のときめきだけに留まらず、思春期特有の感受性の鋭さで「生と死」の境目を見つめる視線へと静かに導いていきます。
湖にまつわる幽霊の噂や、夜の空気に漂う説明のつかない気配は、ただの怪談ではありません。
若さと隣り合わせにある「終わり」への直感、はっきりと言葉にならない怖さ、そして何もかもが初めてゆえの高揚が、同じ時間と空間の中で同時に息づいているのです。
主人公が挑む小さな冒険や、ふと見せる躊躇は、少年が世界の輪郭に指先で触れている証拠のように映ります。
だからこそ、観客は懐かしさに浸るだけでなく、胸の奥を少し痛くする「潜在的既知」の感情にたどり着く。
恋の甘さと死の影が反発しながら寄り添う、この繊細なバランスが本作を唯一無二の体験へと押し上げています。
②16mmフィルムが醸すノスタルジーとロケーションの不穏さ
本作の魅力を一段と引き上げるのが、16mmフィルムで捉えた映像です。
粒子の粗さ、柔らかな黒、肌に乗る自然光のゆらぎが、記憶のアルバムをめくるような懐かしさと同時に、どこか落ち着かない気配を生み出します。
湖面に広がる反射、夕暮れの青と橙の移ろい、森の緑が沈むような階調は、画面の隅々まで「何かが起こり得る」予感で満たされています。
ロケーションは単なる舞台ではなく、心の動きを増幅する共犯者のよう。
静けさの中に潜む風の音、遠くの笑い声、夜の湿度を感じさせる音の設計も、危うさを耳から忍び込ませます。
映像は派手に説明しませんが、視線の高さや引きのフレーミングが、人物と空間の距離を敏感に変化させ、安心と不安の境界線を何度も往復させます。
夏の湖という「絵になる」定番のロケーションを、甘美な避暑地ではなく、若さの背後に重なる死の気配をそっと可視化する場へと変えてしまう、この映像と音の統合は、観客の想像力をほどよく刺激し、物語の余白を豊かにします。
③主演二人の瑞々しい演技が、刹那のきらめきと脆さを見せる
物語を生身の体温で支えるのは、主演二人の瑞々しい演技です。
少年バスティアンに、視線の揺れや呼吸の速さ、言葉にならない戸惑いが自然に宿り、観客は彼の世界を一人称で体感していきます。
年上のクロエは、大人びた振る舞いの奥に、退屈、誇り、寂しさ、そして好奇心が複雑に折り重なった存在として立ち上がります。
二人が並んで歩く沈黙や、何気ない手の動き、冗談の間合いといった微細な瞬間こそが、関係の変化を物語る本作のハイライト。
大きなドラマに頼らず、微小な感情の潮目で心を動かすのです。
そこに、監督シャルロット・ルボンの繊細な演出が息を吹き込み、俳優の即興的な反応を尊重しながら、フレームの中に危うさと優しさを同居させます。
結果として、若さの輝きは単なる眩しさではなく、壊れやすさと隣り合わせの光として捉えられ、観る人は二人の時間が二度と同じには戻らないことを、心地よい切なさとともに受け止めることになるでしょう。
刹那のきらめきを記録するために生まれたかのような演技と演出の呼吸が、見逃せない魅力です。
まとめ
『ファルコン・レイク』は、淡い夏の恋という親しみやすい入口から、思春期が世界を見る目の敏感さを通じて「生と死」の輪郭に触れる、余韻の深い作品です。
湖と森のロケーションに宿る不穏な気配、16mmフィルムが刻むノスタルジックな質感、そして主演二人が呼吸でつないでいく関係の微細な揺らぎが、よくある青春映画の型を新しい重層性へと変えていきます。
何かをはっきり断言しない余白が、観客に自分の記憶や感覚を持ち込ませ、体験を個人的なものにしてくれるのも魅力。
夏の輝きが最も眩しい瞬間ほど危ういーその逆説を、美しく、さりげなく、確かに感じさせる一本です。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を







