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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
第59回では、アイオワ州に住む老人が、時速8kmの芝刈り機に乗ってウィスコンシン州に住む病気で倒れた兄に会いに行くまでの物語を描いたロードムービーを紹介します。
監督は『ツイン・ピークス』や『ブルーベルベット』で知られる鬼才デヴィッド・リンチ。彼のフィルモグラフィーの中で最も異色を放つ、まっすぐにハートウォーミングな作品。
主演のリチャード・ファーンズワースは第72回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。
ちなみに、1994年に『ニューヨーク・タイムズ』誌に掲載された実話を基にしています。
○ストレイト・ストーリー(1999年製作)
スタッフ・キャスト
監督:デヴィッド・リンチ
アルヴィン役:リチャード・ファーンズワース
ローズ役:シシー・スペイセク
~あらすじ~
老人の旅を温かくつづった感動作。73歳のストレイトのもとに、仲たがいしていた兄が倒れたとの知らせが。ストレイトは娘の反対を押し切り、トラクターで兄のもとに出発。道中、彼は家出娘や優しい一家など、さまざまな人と出会い、交流をかさねていく。
引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv31412/)
◆見どころポイント◆
①静かな速度が生む、心の余白と風景の豊かさ
この作品のいちばんの魅力は、芝刈り機という「ゆっくりしか進めない乗り物」が、物語の速度と観客の呼吸をやさしく整えてくれるところです。
時速8キロの旅は、急がないからこそいろんなものを見せてくれます。
畑の向こうで色を変える空、舗道脇に立つ一本の木、夜風に揺れる麦、焚き火のオレンジ色。
こうしたささやかな風景が、アルヴィンの長い人生の体温と重なり、画面に沁みていきます。
アンジェロ・バダラメンティの音楽も、寂しさと希望をほどよく織り込み、移ろう光と影に寄り添います。
派手な事件はほとんど起きませんが、道の途中で交わされる短い会話や、誰かがふと見せる親切が、小さな奇跡として胸に残ります。
例えば鹿を何度もはねて嘆く女性や、家を飛び出した若い女性、戦争の記憶を抱えた退役兵ーどの出会いも過剰に説明されず、余白を残したまま過ぎていく。
それがかえって本当らしく、観る側の心のなかに静かな対話を生みます。
スローな旅が退屈になるどころか、「見過ごしてきた日常の美しさ」を拾い直す時間になる。この穏やかな体験が、見終わった後に柔らかな余韻を長く留めます。
②名優がそっと灯す、人の強さとやさしさ
リチャード・ファーンズワースが演じるアルヴィンは、台詞よりも表情と身体が語る人です。
背筋の伸ばし方、歩幅の小ささ、視線の置き方ーそのひとつひとつが人生経験の重さを伝えます。
頑固さもあるけれど、そこには誇りと礼儀と、ユーモアが同居しています。
無口なやり取りの中に、長年積み重ねた後悔や不器用な愛情が見え隠れし、観る人は彼の底知れぬ思いを自然と受け取ります。
シシー・スペイセクが演じる娘ローズも忘れがたい存在です。
不器用で傷を抱えながら、父の旅を見守る目にあふれる優しさは、家族が家族である理由を思い出させます。
彼女がぽつりと語る過去の出来事は、派手な劇的さを狙わず、ただ真っすぐに胸に届きます。
道中の人々も魅力的です。農夫たちが見せる誠意、若者が漏らす不安、退役兵の静かな痛みーそれぞれがアルヴィンの旅に小さな光を添えます。
大きな説教や教訓はありません。けれど、弱さを抱えた人同士が、できる範囲で手を差し伸べ合う姿が、確かなぬくもりとして積み重なります。
そして、名優たちの演技の力が、物語の隙間をやさしく埋め、観る人の心にもそっと灯りをともします。
③リンチの異色作に宿る、抑制の美学とアメリカの地平
デヴィッド・リンチと言えば、奇妙で不穏な世界の印象が強い監督です。
そのリンチが「真っすぐな物語」を撮るとどうなるのかー答えは、過剰を削ぎ落とした美しさでした。
ここには暴力も謎解きもありません。けれど、リンチらしい「世界へのまなざし」は確かに息づいています。
フレディ・フランシスによる撮影は、アメリカ中西部の地平を一枚の絵のように捉え、長いショットで風や音を感じさせます。
舗道脇を進む芝刈り機の小ささは、人間のちっぽけさを示しつつ、たしかな前進の手応えにもなります。
編集は急がず、観客が自分の歩調で画面に居られるよう配慮され、音楽は感情をそっと強める程度。
この「抑制」が、物語の核心ー年齢、誇り、後悔、そして和解への願いーをまっすぐに届けます。
この物語が実話を基にしていることも観客としては効いてきます。
作りもののドラマではなく、現実に起きた「無理のない勇気」が画面を支え、派手ではないのに深い満足感を残します。
リンチのファンには新鮮、ロードムービーが好きな方には王道、家族で観ても安心できる懐の広さ。奇をてらわず、味わうほどに豊かになる一本です。
まとめ
『ストレイト・ストーリー』は、速さや刺激に慣れた目と心を、ゆっくりとした歩調へとやさしく戻してくれる映画です。
芝刈り機の速度に合わせて風景と人の気配を見つめ直していると、派手な出来事がなくても満ち足りる時間があることに気づきます。
名優たちの落ち着いた演技、抑えた音楽と撮影、余白のある構成が、年を重ねることの重みと誇り、弱さと優しさ、そして距離を越えて誰かに会いに行く意味を、飾らず真っすぐに伝えます。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を







