~ムーンライズ・キングダム~ 東京ラスク社員が紹介する おやつの時間におススメな映画 Vol.51

~ムーンライズ・キングダム~ 東京ラスク社員が紹介する おやつの時間におススメな映画 Vol.51

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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。

映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。



第51回では、駆け落ちした12歳の男女と、彼らを心配する親や周囲の人々の滑稽な姿を描いたコメディドラマを紹介します。

監督のウェス・アンダーソンは、絵本のような色彩とシュールなキャラクターたちによって紡がれるチャーミングな物語で知られ、日本でも大人気。本作は彼の作品の中でも特に人気がある傑作です。


○ムーンライズ・キングダム(2012年製作)



スタッフ・キャスト

監督:ウェス・アンダーソン


シャープ警部役:ブルース・ウィルス
ウォード隊長役:エドワード・ノートン
ウォルト役:ビル・マーレイ
福祉局:ティルダ・スウィントン

~あらすじ~
教会で「ノアの箱船」のお芝居が上演された時に出会ったサムとスージーは、1年にわたる文通の末、駆け落ちを敢行する。2人は彼の暮らす島の入り江を目指し、一世一代の冒険を始めるが、やがて、大人たちは2人がいなくなった事に気付き、島は大騒動に。結局、大人たちに見つかった2人は離ればなれにされ、親元に戻されるはめに。

引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv50807/)



◆見どころポイント◆


①何度も眺めたくなる“箱庭美学”が物語を前に進める

 本作最大の魅力は、アンダーソン流の“箱庭”が物語の推進力と一体化していることです。

 1965年の架空の島、ニューペンザンスの海・森・岬・灯台が、手書きの地図のように整理され、正面から捉えた水平な構図でリズミカルに紹介されます。

 各ショットは絵本の見開きを思わせる色彩で彩られ、黄色いスカウト制服、ターコイズの海、苔むす緑などカラフルな色彩が見事に調和。

 さらに、トランク、双眼鏡、レコード、手紙、猫、ナイフー少年少女が持ち出す小道具は単なる装飾にとどまらず、彼らの欲望や恐れを象徴するキーアイテムとして機能しています。

 ミニチュア的な演出やも心地よく、シーンが“組み立てられる”快感が物語の歓びへと直結します。

 ナレーターが地形を解説するメタな導入は、この世界への入門書を手渡される体験そのもの。

 画面の左右移動、カットのタイミング、フレーム内でのキャラクターの動きが、ユーモアと緊張のバランスを保ちながら常に新鮮な驚きを提供してくれます。

 結果、眺める喜びと先へ進む好奇心が同時に満たされ、画面の楽しさと物語の面白さの共存には中毒性があるほどです。


②新旧の作曲家による音楽が物語を彩る

 本作において、音楽は単なる雰囲気付けではありません。

 20世紀イギリスを代表する作曲家ベンジャミン・ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」や「ノアの洪水」といった曲が随所で使用されています。

 また、現代の映画音楽界の重鎮であるアレクサンドル・デスプラが本作のオリジナルスコアを担当。

 この新旧合わさった音楽たちが、主人公たちの逃避行の焦燥と高揚といったテンションをリズミカルに支え、感情の陰陽を滑らかに表現しています。

 重要なのは、音楽が過剰に感情を押し付けず、編集・構図・色彩とあくまで連携していること。牧歌的な曲群に潜むほろ苦さが、少年少女の初恋の不安や“居場所への渇望”をやさしく導きます。

 結果、この映画を見る体験は“耳でも世界を理解し、目で見て確信する”という二重の楽しさになります。
 音楽が教えてくれるのは、彼らの旅が「反抗」ではなく「編曲」であることー既存の旋律(大人のルール)を借りながら、自分たちの和音を探す試みだという真実です。


③孤独を抱えた子どもと不器用な大人が、優しさでつながる群像劇

 物語の中心にいるのは、カキスカウトの少年サムと、読書と空想を愛する少女スージー。二人が交わす手紙は、世界から少しはみ出した自分の輪郭を確かめる儀式のようで、駆け落ちは“拒絶”ではなく“肯定”を目指す第一歩とも言えそうです。

 彼らの行為には合理性があまりないとしても、心の誠実さが一貫しているので観る人は彼らを応援したくなるのです。

 周囲の大人たちー警官シャープ、スカウト長ウォード、母ローラ、父ウォルト、福祉局、司令官ーも、皆どこか不器用です。
 彼らはルールと安全を守ろうとしながら、同時に自分自身の孤独に向き合わざるを得ない。

 大人の失敗が滑稽に描かれる一方で、決定的な場面では意外な思いやりが発露し、コミカルとハートウォーミングの緩急が生まれています。

 特筆すべきは、少年少女の“自給自足”な愛の形。
 釣り、裁縫、読書、ダンス、野営ー小さな自立の連続が、ロマンティックの核を現実に接地します。

 アンダーソン監督は子どもを理想化しません。恐れ、怒り、嫉妬も描く。
 群像劇の端々に宿る微細な優しさが、観る人の記憶に長く残ります。



まとめ

 『ムーンライズ・キングダム』は、孤独な子どもと不器用な大人が優しさでゆるやかに連結していく、ロマンティックな冒険譚です。
 初恋の切実さ、居場所を求める切望、ルールと自由の折り合いー誰もが通過する普遍のテーマが、軽やかな笑いと鮮やかな色彩の中で静かに成熟していきます。
 美しさに導かれ、物語に抱かれ、心が少し広がる。その体験こそ、本作が長く愛される理由です。

 それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を

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