皆さん、こんにちは!
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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
○秘密の森の、その向こう(2021年製作)
スタッフ・キャスト
監督:セリーヌ・シアマ
ネリー役:ジョセフィーヌ・サンス
マリオン役:ガブリエル・サンス
母役:ニナ・ミュリス
~あらすじ~
8歳の少女ネルは、祖母の死をきっかけに、両親とともに森の中にある祖母の家を訪れます。母親は悲しみに沈むなか、ネルは森へと足を踏み入れ、そこで自分とそっくりの少女マリオンと出会います。やがて二人は秘密基地づくりなどを通して友情を深めていきます。森での不思議な出会いを通じて、ネルはこれまで知らなかった母親の心にそっと触れていくー
第5回では、2人の少女のささやかな交流を描き、その静謐な雰囲気と深い人間描写により世界の映画祭で高い評価を受け、日本でもリピーターが続出した映画を紹介します。
監督・脚本はフランス出身のセリーヌ・シアマ。ジェンダーや成長を繊細に描く作風が特徴で、『トムボーイ』『燃ゆる女の肖像』などの作品で国内外から高く評価されています。
◆見どころポイント◆
①静けさに満ちた「子ども視点」の純粋な世界観
この映画の最大の魅力は、“子どもの視点”が貫かれていることです。ネリーやマリオンが感じる世界の広がり、戸惑い、そして好奇心。森のざわめき、家の微かな音、光の入り方ーそうした環境のひとつひとつが、まるで子どものころの記憶を呼び戻すように丁寧に描かれます。
物語の展開は静かで、ドラマティックな場面や派手な演出はほとんどありません。しかし、幼いネリーの観察眼や素直な感情が、ごく日常の風景にも深い意味を宿し、観客自身の子ども時代や、親への気持ちを思い出させます。
大人の目線になりがちな家族の“別れ”や“絆”も、子どもならではの等身大の体験として伝わってきます。
②独特な「時間の重なり」-過去と現在が静かに溶け合う構成
一見すると、ただの少女ふたりの「出会い」と「友情物語」ですが、物語が進むにつれて不思議な感覚が生まれます。
同じ家、同じ森、そして驚くほど似ている2人の少女。観客は、ネリーが出会ったマリオンの正体、そして“なぜこんなに似ているのか”という謎を自然と考え始めるでしょう。
この映画では、“時間”や“現実”という枠組みが静かに溶けあい、過去と現在が曖昧になる独特の空間が生まれます。
説明過剰なセリフや映像的トリックを用いず、静かに、“もしかしたらこの森の向こうに…”と観客自身が予感していくーその体験自体が大きな特徴です。
マリオンの正体を示唆する小さな違和感や符号が、随所に織り込まれているのも巧みで、「いつのまにか自分が物語の謎解きに巻き込まれている」ことを感じられる稀有な映画です。
SFでもファンタジーでもない、“静かな奇跡”としての時間の重なりを存分に味わってください。
③「親子の記憶」と「喪失の癒し」をめぐる普遍的なテーマ
本作全体を包み込むのは、「大切な人を失うこと」「親子の心の距離」といった普遍的なテーマです。
母親を支えたいけれど、どう接したらよいかわからないネリー。家族の歴史や、母が抱えてきた悲しみが、森の静けさと少女たちの交流の中で、少しずつ浮かび上がってきます。
秘密基地を作ったり、ありふれた遊びを一緒に楽しんだりする中で、言葉にしきれない寂しさや愛情が育まれていくーそれは観る人にとっても、誰もが経験する「家族への思い」を優しく肯定してくれる時間です。
親や家族について「知らなかった過去」を、少女ネリーが想像し、寄り添おうとする。マリオンという鏡を通じて親子は新たな関係性を見つけていきます。
悲しみや距離感、そしてそれを乗り越えることで生まれる小さな癒しー本作が描く喪失と再生は、決して大仰ではなく、観る人の心にさざなみのように余韻を残します。
まとめ
『秘密の森の、その向こう』は、子どもの視点の純粋さ、時間を超えた繋がり、そして家族の本質に静かに迫る傑作です。
何気ないやりとりのすべてが、実は親子の深い物語を内包しているーそれに気付いた時、この映画の静かな感動があなた自身の記憶や人生にもやさしく響いてくるはずです。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を