~ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ~ 東京ラスク社員が紹介する おやつの時間におススメな映画 Vol.41

~ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ~ 東京ラスク社員が紹介する おやつの時間におススメな映画 Vol.41

皆さん、こんにちは!
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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。

映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。



第41回では、クリスマスと新年を共に過ごすことになった、孤独な3人の絆を描くヒューマンドラマを紹介します。

第96回アカデミー賞で、作品賞・主演男優賞・助演女優賞・脚本賞・編集賞の5部門にノミネートされ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞を受賞しました。


○ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(2023年製作)



スタッフ・キャスト

監督:アレクサンダー・ペイン


ポール役:ポール・ジアマッティ
アンガス役:ドミニク・セッサ
メアリー役:ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ

~あらすじ~
生真面目で融通の利かない性格で、生徒や同僚から嫌われている教師ポールは、クリスマス休暇に家に帰れない学生たちの監督役に任命される。学校に残ったのは、勉強はできるが家族関係に問題を抱えるアンガスと、一人息子を亡くしたばかりの料理長メアリー。クリスマスの夜、アンガスがボストンに行きたいと言いだす。当初反対したポールだったが、メアリーに説得され、「社会科見学」と称してアンガスとともにボストンに向かう。

引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv85331/)



◆見どころポイント◆


①反発から寄り添いへ。実生活に近い、人間の機微が息づく

 本作の魅力は、ドラマを無理に劇的に膨らませない姿勢にあります。

 大事件や過剰なカタルシスに頼るのではなく、休暇中の静かな校舎という限られた空間の中で、三人の距離が一歩ずつ変化していく。その変化は些細な言葉の選び方、視線の泳ぎ方、ため息や沈黙の長さに宿り、まるで私たちの日常を鏡のように映し出します。

 孤独を抱えた彼らは互いに反発しながらも、ふとした拍子に相手の痛みの温度を知り、また意固地になる。そうした往復運動が、傷や寂しさ、温かさにふるえる心のひだを見事に可視化しています。

 しかも、その過程にはユーモアがたっぷり。皮肉まじりの機知に富んだ台詞、ちょっと不器用な善意の食い違い、冬の寒さとぬくもりが同居する可笑しみが、和やかな温度を生み出します。結果として立ち上がるのは、人生の手ざわりに近いビタースウィートな物語。

 何かを完全に取り戻すのではなく、喪失の輪郭を受け入れながら、他者と肩を並べる勇気だけが確かに残るーその「ささやかさ」こそが、大きな感動へと繋がっているのです。


②丁寧な演出と“美しい脚本”が織りなす、70年代の空気と手触り

 アレクサンダー・ペイン監督の演出は、人物の呼吸を乱さないことに徹しています。

 カメラはぐいと泣かせにいくのでなく、適切な距離を保ち、視線の揺らぎや手の動き、言葉が出ない時間を見逃さない。結果、観客は登場人物の内面の温度変化を「観察」しながら、自然に寄り添うことができます。

 会話の切れ味も魅力です。皮肉と温かさを同居させる美しい脚本は、笑いと胸の痛みを同じ呼吸のなかで往復させ、さりげない一文が後になって効いてくる構成の妙に満ちています。

 さらに、1970年代の空気感を再現する美術と撮影も秀逸。ざらりとした質感、落ち着いた色調、校舎の壁や掲示物、寮の雑然とした部屋、街へ出た短い旅で目にする看板や冬の光までが、時間の層をまとって画面に刻まれます。

 編集はリズムを急がず、余白の時間を大切に積むことで、人物の感情が自然に熟す余地を確保。

 ユーモアの間合いも絶妙で、笑いが常に人への愛情に接続されています。だからこそ、ほろ苦さが最後に甘さへと裏返る瞬間が、押しつけがましくなく胸に沁みてきます。


③三人の名演ージアマッティ、セッサ、ランドルフが織り上げる深い余韻

 本作の推進力は何といっても、三人の俳優の圧倒的な名演と相互作用にあります。

 ポール・ジアマッティは、気難しくも憎めない歴史教師をチャーミングかつ奥深く造形。厳格な口調の陰に潜む臆病さ、弱さを見せまいとする皮肉っぽさ、そして一瞬の表情の緩みが、長年の孤独を一枚ずつ剝いでいく過程をリアルに伝えます。
 彼の台詞のリズムと身体のぎこちなさが生むユーモアは、人物を茶化さず、むしろ人間味を厚くします。

 ドミニク・セッサは、家族関係が複雑な生徒アンガスを繊細に演じ、反抗の刃先に常に脆さと渇望をにじませます。目線を逸らす、そのほんの一呼吸に「わかってほしいのに、見抜かれたくない」年頃の矛盾が宿り、観客は彼の未熟さを責められなくなるでしょう。

 そして何と言ってもダヴァイン・ジョイ・ランドルフ。息子を喪った哀しみを、言葉だけでなく表情や仕草で豊かに表現します。台詞の後に訪れる沈黙、皿を置く手のわずかな震え、ふと漏れる笑みのやわらかさーそのすべてが彼女の人生の温度を伝え、画面の空気を静かに変えていきます。

 三人が対峙する場面では、誰も主張しすぎず、それぞれの孤独が相手の孤独によって輪郭を得る。アレクサンダー・ペインの丁寧な演出と美しい脚本、そして三人の名演が見事に融合しています。



まとめ

 『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、派手な事件は使わずに、人と人の間に横たわる距離と時間を描き切る名作です。
 孤独な心が寄り添い合うまでの反発と逡巡、その過程に生まれるユーモア、そして受け入れることのほろ苦さが、現実の手触りをともなって胸に届きます。
 主演三人の演技は最高に素晴らしく、人物の尊厳を小さな仕草で立ち上げる。ここにあるのは奇跡ではなく、生活の中でつかむ小さな勇気と温もりです。
 冬の光のように静かな感動が、見終わった後もしばらく心に残り続けるはずです。

 それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を

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