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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
第38回では、ある日突然、生後3か月の赤ん坊のシングルファーザーになってしまった男とゲイの友人が子育てに奮闘し、8歳になった少女と絆を深めていく姿が描かれるヒューマンドラマを紹介します。
本国フランスで大ヒットを記録し、世界中を温かい涙で包んだ感動作です。
○あしたは最高のはじまり(2016年製作)
スタッフ・キャスト
監督:ユーゴ・ジェラン
サミュエル役:オマール・シー
グロリア役:グロリア・コルストン
ベルニー役:アントワーヌ・ベルトラン
クリスティン役:クレマンス・ポエジー
~あらすじ~
南仏コートダジュールの海辺の町で毎日がバカンスのような暮らしを送るサミュエル。そんな彼の前に、かつて関係をもったというクリスティンが現れ、生後3か月の赤ん坊グロリアを託し、どこかへ消えてしまう。彼女を追うが、ロンドンで途方に暮れたサミュエルをテレビのプロデューサーでゲイのベルニーが救い、3人の生活が始まる。
引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv62935/)
◆見どころポイント◆
①オマール・シーの人間味が生む、笑いと涙の振れ幅
本作最大の推進力は、主演オマール・シーのダイナミズムです。
南仏で自由気ままに生きていたサミュエルが、ある日突然“父”にされる理不尽さを、彼は軽やかな笑いに変えます。
言葉の通じないロンドンへ飛び込み、仕事も住まいもゼロからつかみ取っていく過程は、物理的なアクションと間の妙を効かせたコメディで驚くほど痛快。
それでいて、娘グロリアに向ける眼差しはあたたかく、ふとした沈黙や視線の揺れだけで感情の層を増幅させます。
彼は「豪快」「優しさ」「少しの不器用さ」を同時に持ち合わせ、観客は彼を“応援したく”なります。単なるコメディではなく、父親としての未熟さと成長のリアリティを両立させている点が魅力です。
グロリアとの掛け合いは自然で、ふたりが積み上げる日常の小さな冒険やルーティンの描写は、笑いの後に静かな余韻を残します。
オマール・シーだからこそ成立する温度と推進力ーそれが本作の魅力の核です。
②血より濃い、“選んだ家族”の物語
本作は「父になること」を、血縁ではなく“選択”と“実践”の積み重ねとして描きます。
おむつ替えもあやし方も分からない男が、夜泣きに付き合い、朝食を作り、学校へ送り、仕事をこなし、失敗し、またチャレンジする。やがてふたりだけの言葉やルールが芽生え、小さな部屋が“家”に変わる。
そこにはロンドンで出会う人々の支えもあり、特にサミュエルの友人ベルニーが醸し出す包容力は、血縁を超えた共同体の温度を具体化します。
「親らしさ」は立派な経歴でも正論でもなく、毎日の“やってみる”の反復で育つーその普遍的真理が、ユーモアに包まれて自然と胸に届く構成です。
グロリアの好奇心と観察眼、娘のアイデアが父を救い、父の無鉄砲さが娘を励ます双方向性も秀逸。
価値観の違う大人同士(サミュエルと母クリスティン)が子どもを介してぶつかり、歩み寄ろうとするドラマは、現代の多様な家族像を誠実に照らし出します。
観終わる頃には、“家族をつくることは関係を耕すことだ”という実感が静かに残ります。
③疾走感ある演出と、ロンドン×南仏の色彩設計
監督ユーゴ・ジェランは、物語を“動き”と“色”で語ります。
南仏の陽光にきらめく海辺から、灰色とカラフルが混在するロンドンの街角へ。移動そのものが人生の転換点であることを、切れ味の良い編集と音楽で体感させます。
サミュエルの職業に関わるスタントやアクションは、父としての“度胸”と“覚悟”を可視化する装置として機能し、笑える場面ほど後半の感情に効いてくる設計。
部屋の壁に増えていく写真、手作りの小物、二人だけの記号ー美術の細部が時間の経過を語り、言葉以上に絆の厚みを積み重ねます。
加えて、英仏が交錯する言語環境は、文化の違いが生むズレと笑いを生んでいます。
ポップで軽快な音楽は彼らの行動を後押しし、静謐な旋律は彼らの選択の重みを受け止める。
全体のテンポは小気味よく、けれど要所では呼吸を置くーその緩急が、最後まで観客の感情を丁寧に導きます。
まとめ
『あしたは最高のはじまり』は、突然“父”になった男が、失敗だらけの毎日を重ねるうちに、本当の家族を「つくってしまう」までの道のりを、笑いと温もりで描いた一本です。
オマール・シーのチャーミングさ、子役グロリア・コルストンの自然体、脇を支えるベルニーの存在感、そして移動と色彩で語る演出が、物語を軽やかに、しかし確かな手触りで運びます。
気持ちよく笑って、ふと胸が熱くなる瞬間を、ぜひ。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を