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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
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第25回では、ギレルモ・デル・トロ製作総指揮のもと、アンディ・ムスキエティ監督がメガホンを取ったホラー映画を紹介します。
身寄りをなくした姉妹と彼女たちに執着する“何か”の謎を中心に、家族愛と恐怖の境界線を描き出した作品です。
監督を務めたアンディ・ムスキエティは本作の後に、スティーヴン・キング原作『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』シリーズを監督したことで知られています。
○MAMA(2013年製作)
スタッフ・キャスト
監督:アンディ・ムスキエティ
アナベル役:ジェシカ・チャステイン
ルーカス役:ニコライ・コスター=ワルドー
~あらすじ~
精神を病んだ投資仲介会社経営者のジェフリー(ニコライ・コスター=ワルドー)は、2人の共同経営者と妻を殺害する。2人の娘たち、3歳のヴィクトリアと1歳のリリーを連れて雪道を車で逃走した彼はスリップ事故を起こし、崖から転落してしまう。奇跡的に助かったジェフリーは森をさまよい、小屋を見つける。そこで娘たちを殺そうとするが、そこに潜む何者かによって彼自身が消されてしまう。残された娘たちは不気味な存在となって、その小屋に留まる。5年後、ジェフリーの弟ルーカス(ニコライ・コスター=ワルドー)が娘たちを発見する。娘たちの心理状態を研究したいドレイファス博士(ダニエル・カッシュ)の策謀のもと、叔母との親権紛争に勝った彼は、恋人アナベル(ジェシカ・チャステイン)とともに博士が用意した家で共同生活を始めるが……。
引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv55695/)
◆見どころポイント◆
①ハッピーエンド?バッドエンド?ー「母性」と「執着」の闇
本作の最大の特徴は、”MAMA”と呼ばれる霊的存在が単なる恐怖対象や加害者として描かれていないことです。
彼女は途方もなく深い“母性”と、喪失ゆえの“執着”に囚われており、その哀しみが物語の核となっています。
“MAMA”の生前の悲劇と、その後の強烈な愛情(ある種の狂気)が、姉妹への異常な保護へと変容しています。
欧米ホラー映画の怪物の多くが説明のない「不条理な恐怖」で終わる中で、本作は怨霊=悪ではなく、苦しんだ者の切実な願いがモンスター化した存在として描写されています。
登場人物が“MAMA”を単に排除するだけではなく、それぞれが彼女の過去や動機に向き合おうとする展開が、人間ドラマとしての厚みも与えています。
ホラー映画では珍しく本作のラストは、人によってハッピーエンドと取るか、バッドエンドと取るか分かれるような独特の切なさを持っています。個人的には、そこが本作の最大の魅力です。
②怪異が生む“家族”の再定義――「育てる」「守る」ことの意味
『MAMA』はスーパーナチュラル・ホラーでありながら、家族の再生と再定義が軸となる作品です。
引き取られた姉妹と、新たな保護者であるアナベルとの関係性、その距離感や葛藤が物語の感情線を牽引します。当初は母性に懐疑的だったアナベルが、姉妹と触れ合うことで少しずつ「家族になること」と向き合い始める。その一方で、MAMAによる介入は「本当の母親とは誰か?」「守る権利は誰にあるのか?」という齟齬を際立たせます。
MAMAは自分を“本当の母”だと信じ執着することで、家族としての空間そのものを“占有”します。この異常な争奪戦を、大人の論理や血縁の絶対性だけでは語れない「家族」の脆さ、多義性として描いている点が秀逸です。
特に、姉妹の発達や性格(森の生活による野生化、一方の姉だけが徐々に社会順応していく齟齬)も、“家族”をめぐる問いを多層的にしています。
血縁、環境、愛着、それぞれが揺れ動きながら、「本当の“家族”とは何か?」というテーマが終始深く掘り下げられています。
③映像と音響による“物語性ある恐怖”の革新
ムスキエティ監督の特徴は、“ただ怖がらせる”演出にとどまらず、映像と音響のすべてに“意味”を持たせていることです。
例えば、
・森の描写には、野性や不条理、母性の混乱が重なり、MAMAの魂の迷宮が反映されている。
・山小屋や新居の影の使い方、カメラワークが、観る人の心理的な不安を徐々に醸成している。
・MAMA自体の存在感は、物理的なヴィジュアルだけではなく、その「気配」「音」で演出され、観客に“何かが常に近くにいる”緊迫感を与え続けている。
さらに、幼い姉妹の視線や行動による間接的な恐怖の見せ方や、“異物”と“家族”の日常が交錯する瞬間の静かな不穏さも特徴的です。
いわゆるジャンプスケア(唐突な驚き)のみならず、情感的な映像美や計算された沈黙も織り交ぜ、観客は単なる“被害者視点”以上の複雑な共鳴を体験させられます。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』シリーズで素晴らしい辣腕をふるったムスキエティ監督ですが、本作ですでにその才能を感じられます。
まとめ
『MAMA』は表面的なホラーにとどまらず、母性や家族、喪失と執着という普遍的なテーマを重層的に描いた作品です。
MAMAという存在に込められた哀しみと愛、そして新たな「家族」のあり方を模索する登場人物たちの葛藤は、観客に“恐怖”と“共感”を同時に投げかけます。
心を揺さぶるストーリーテリングと印象的な映像美が融合し、「なぜ人は家族に執着し、闇に堕ちてしまうのか?」という核心的なテーマを深く掘り下げている点が、この映画の本質的な魅力です。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を