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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
第24回では、英国の雄大な風景を舞台に、20年間連れ添った同性カップルが難病という現実と向き合いながら、互いへの深い愛と新たな決断に心揺れる旅を描く切なく美しいロードムービーを紹介します。
主演2人の演技がとにかく素晴らしく、個人的に今まで観た映画の中でもトップクラスに泣きそうになった作品です。(映画ではめったに泣かないです…)
○スーパーノヴァ(2020年製作)
スタッフ・キャスト
監督:ハリー・マックイーン
サム役:コリン・ファース
タスカー役:スタンリー・トゥッチ
~あらすじ~
無口で不器用なピアニストのサムと、人を惹きつける才能を持つ作家のタスカーは長年のパートナー。ユーモアと文化をこよなく愛し、家族や友人に恵まれたふたりは、最高の人生を紡いできた。だが、タスカーが病魔に侵されてしまったことで、添い遂げるはずだったふたりの大切な人生に、予定より早く最終章が訪れてしまう。
引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv73275/)
◆見どころポイント◆
①儚くも美しい「終わり」に向かう愛の本質
『スーパーノヴァ』の最大の魅力は、「終わり」に向かいながらもなお愛し合い続ける2人の姿の切実さと誠実さです。
不可逆な現実(タスカーの進行性認知症)を前にしても、サムとタスカーは互いを思いやり、時に衝突し、そしてまた理解し合おうとします。
彼らの愛は、絶対的な肯定や都合のよい「幸福」だけにとどまりません。不安、葛藤、すれ違い、そして絶望——これらの感情を丁寧に映し出すことで、観客に「愛とは何か」を静かに問いかけてきます。
タイトルの“スーパーノヴァ”(超新星爆発)の如く、人生の終焉に向けた最期の輝きが、2人のやり取りや表情の一つ一つに宿っています。旅路の途中、広大な星空を見上げるシーンは象徴的で、「終わり」こそが2人の物語をより強く尊くするーまさにこの作品のテーマを端的に示した場面です。
物語は回想や説明ではなく、現在のやりとりを中心に据え、余計な脚色を排しているため、観る人は直接サムとタスカーの感情の波に飲み込まれていきます。過度な演出をせずに淡々と「終わり」を描き切っているところが、心を強く揺さぶります。
②芸術を愛した2人、人生の余白に宿るユーモアと温もり
本作の根底に流れるのは、芸術への愛と人生の豊かさです。
作家のタスカーとピアニストのサム。互いの創作と表現を大切にし、さりげない会話の中にも冗談が交わされ、不安や悲しみを笑い飛ばすユーモアが息づいています。
彼らが家族や古くからの友人に再会する場面には、20年寄り添った月日の重みが感じられますが、同時にその積み重ねの中には笑顔が絶えません。「最後の旅」でありながら、過去の写真を見て懐かしんだり、一緒に音楽を楽しんだり、何気ない瞬間すべてが2人にとってかけがえのない「小さな輝き」で満ちています。
特に、芸術を通じて2人が互いを理解し、支え合ってきたことが、細やかに描かれている点が印象深いです。病と向き合いつつも、サムがピアノを弾き、タスカーが原稿の手直しをする姿には、人生で大切なものが何なのか、静かに語りかける力があります。
芸術への情熱が、彼らの愛と人生観をより豊かに浮かび上がらせています。
③コリン・ファース×スタンリー・トゥッチの名演、映像と静寂で紡ぐ物語の真実味
本作を名作たらしめているのは、何よりもコリン・ファースとスタンリー・トゥッチの驚異的な演技です。
サムとタスカー、それぞれの内面に生じる恐れや後悔、そして言葉にできなかった愛情表現ー台詞では語り尽くせない感情を一挙手一投足、一瞬の目線やため息だけで観る人に伝えてきます。
特に、コリン・ファースの繊細な泣きの演技や、静かな夜のシーンでの無言の哀しみは圧巻です。個人的に、本作はコリン・ファースにとって『英国王のスピーチ』や『シングルマン』と並ぶ代表作だと思っています。
一方スタンリー・トゥッチも、ユーモアを交えながらも徐々に深まる哀しみを、自然体の演技で表現しています。
彼らの間に“演技”を感じさせない呼吸感が生まれており、20年愛を積み重ねた2人の日常のリアリティに繋がっています。
映像面でも特徴的です。灯りの少ない夜や夕暮れの静かな場面、自然の雄大さと2人の親密なやりとりを対比させ、物語の寡黙な美しさを際立たせています。
主張しすぎない音楽とともに、画面から静かに滲み出る感情が、観る側の涙腺を自然に刺激します。
エンタメ色を排し、抑えたトーンで終始描き切る演出は、LGBTQ作品にありがちな社会的メッセージを薄め、本質的な人間ドラマとしての完成度が高まっています。
まとめ
『スーパーノヴァ』は、終わりに向かう愛の形を、圧倒的な静けさと誠実さで描いた珠玉のラブストーリーです。
芸術やユーモアを分かち合ってきた2人が、死と共に向き合いながらもなお、互いへの温もりを手放さずに歩み寄り続けるーその姿が静かに胸を打ちます。
日常の小さな幸せに満ちていながらも、時に言葉では言い表せない哀しみと逡巡が滲む本作。コリン・ファースとスタンリー・トゥッチの名演が、ごく普通の「人生」や「愛」の本質をありありと感じさせ、人間の尊厳と誠実さへの深い肯定に繋がっています。
タイトル“スーパーノヴァ”の語るように、最期に過去最高の輝きを放つ2人の愛。その儚さと美しさに、あなたもきっと自分自身の人生を重ねずにはいられません。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を