皆さん、こんにちは!
いつも東京ラスクオンラインショップをご利用いただき、誠にありがとうございます。
東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
第20回では、1980年に公開されたアメリカのパロディコメディ映画を紹介します。
旅客機を舞台に、無数のギャグと風刺で当時の映画や社会、文化を痛烈に皮肉りつつ、テンポよく展開されるナンセンスなユーモアが特徴です。
私はこれ以上にくだらないコメディ映画を知りません!
なぜかわかりませんが、アメリカの各雑誌の「史上最高の映画」リストにいつも名前を連ねており、全米脚本家組合が2015年に発表した"101 Funniest Screenplays"(最も面白い脚本101選)の第4位にランクインしています。
○フライングハイ(1980年製作)
スタッフ・キャスト
監督:ジム・エイブラハムズ/ デヴィッド・ザッカー/ジェリー・ザッカー
テッド役:ロバート・ヘイズ
エレイン役:ジュリー・ハガティ
ルーマック医師役:レスリー・ニールセン
~あらすじ~
ベトナム戦争のトラウマを持つ元パイロット、テッド・ストライカーは、愛する元恋人イレーンを取り戻すため、彼女が乗務する旅客機に搭乗します。ところが機内で予期せぬトラブルが発生し、機上の人々の命を賭けたドタバタ劇が始まることになります。
◆見どころポイント◆
①圧倒的テンポの「パロディギャグ」の連続
『フライングハイ』の最大の特徴は、とにかく息もつかせぬギャグの応酬にあります。
パロディの対象は、当時人気だったパニック映画『大空港』(Airport)シリーズはもちろん、広義の映画ジャンル全体に及びます。
たとえば、シリアスな場面であえて全く緊張感のない会話が展開されたり、登場人物が物理法則を無視した大げさなアクションを披露したり、画面奥のモブキャラまで一切手を抜かず笑いを仕込んでいます。
たった1分のシーンでもこれでもかというほど複数回ギャグが差し込まれるため、二度三度と見直すことで初めて気づく巧妙なコメディ要素があるのも魅力です。
脚本を手がけたジェリー・ザッカー、ジム・エイブラハム、デヴィッド・ザッカーの「ザッカー=エイブラハム=ザッカー」トリオは、ノンストップのギャグ畳みかけを徹底しています。
たとえば、自動操縦装置「オート」の人形や、「エマージェンシーで集まるプロフェッショナルたちが揃いも揃って無能」など、状況そのものをギャグとする演出が散りばめられています。
また、「空港でアナウンスを繰り広げる男女の諍い」や「サブタイトル上のギャグ(日本語吹き替えでも工夫されている)」など、当時ならではの時代背景や映画業界への皮肉も本作の色付けとなっています。
本作は、ボケやツッコミといった「日本的な」コメディの枠に収まりきらない構造的なギャグが多用されています。映像、音声、台詞、すべてを使い倒して観客を笑わせる仕掛けが、途切れなく詰め込まれているのです。
②主演、脇役まで「全員が真剣にバカを演じる」絶妙なキャスティング
コメディ映画ながら、配役には当時のシリアスな映画やテレビで活躍していた実力派俳優が起用されています。
主人公テッド・ストライカーを演じるロバート・ヘイズ、元恋人イレーン役のジュリー・ハガティに加え、特に注目すべきはそれまでシリアスな名作に出演してきたレスリー・ニールセンの存在です。ルーマック医師役で登場するニールセンは、以降コメディ路線に転じるきっかけとなる本作で、「一切表情を崩さずにバカな台詞や行動を繰り広げる」演技によって強烈な笑いを生み出しています。以降、ニールセンは『裸の銃を持つ男』シリーズなど、コメディの顔として広く認知されるようになります。
また、機長役ピーター・グレイブスや副操縦士役カリーム・アブドゥル=ジャバー(伝説的NBAプレーヤー)が登場し、いずれも予想を裏切る演出と「本来シリアスな役者が本気でコメディに挑戦する」姿が観客に新鮮な驚きと笑いを提供しています。
こうしたキャスティングはギャグそのものにも深みと説得力を与えており、”ふざけたシリアス”の絶妙なバランスこそが本作の味わいと言えます。
③パロディに込められた「映画愛」と社会風刺
本作がただのドタバタコメディに終わらない大きな理由は、多層的な「映画愛」と、皮肉に満ちた時代批評(風刺)が盛り込まれている点です。
基になった『大空港』シリーズや、戦争映画からロマンス映画まで、当時の流行ジャンルを網羅的に引用しつつ、その「お約束」や「ご都合主義」を面白おかしく引用しています。
飛行機が襲われるというありふれたパニック展開、クライマックスに至るまでの一連の流れはベタな型通りですが、その随所にツッコミ不可能なほど滑稽な出来事が差し挟まれ、観客は映画という虚構世界の枠組みに思わず自覚的になります。
スピルバーグの名作『ジョーズ』のメインテーマを使ったギャグ演出が冒頭からいきなり始まり、その他『地上より永遠に』の名シーンもパロディにしたり、映画好きの方はさらに楽しめるシーンがたくさんです。
あわせて、当時の社会や広告、政治など、〈映画の外側〉にも鋭い皮肉が向けられていることにも注目すべきです。
たとえば、淡々と仕事をこなすスチュワーデス、パイロットの本音・建前の転倒、アメリカ社会のステレオタイプ的な描写、ナンセンスなCMパロディなど、一本の娯楽映画を超えた「メタ的な」視点が終始息づいています。それでいて決して説教臭くならず、すべてが”笑い”というフィルターで昇華されている点も評価が高いところです。
さらに、シナリオ奥には「人間誰しも失敗する」「最後の一手が意外に活路をもたらす」という希望のメッセージも織り込まれており、喜劇でありながら、観客へのエールにもなっています。
まとめ
『フライングハイ』は、予備知識がなくとも楽しめるナンセンスギャグの連発により、映画好きも普段コメディを観ない方も巻き込んで笑わせる、稀有なコメディ映画です。
映画という虚構世界を愛情と皮肉を込めて徹底的にパロディ化しつつ、俳優陣は終始真剣そのものでドタバタを演じ抜きます。観る人すべてが肩の力を抜いて楽しめ、多くのギャグや演出に今なお影響を与え続けている名作だと言えるでしょう。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を