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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
第16回では、姉妹の絆とカンフーアクション、そして愉快なユーモアが交差する、イギリス発の異色な青春映画を紹介します。
すべてが型破りで、見たことのない映画体験ができる作品です。
○ポライト・ソサエティ(2023年製作)
スタッフ・キャスト
監督:ニダ・マンズール
リア役:プリヤ・カンサラ
リーナ役:リトゥ・アリヤ
ラヒーラ役:ニムラ・ブチャ
サリム役:アクシャイ・カンナ
~あらすじ~
ロンドンのムスリム家庭に生まれ、スタントウーマンを目指す女子高生リア・カーン(プリヤ・カンサラ)。日々カンフーの修行に励む彼女だったが、学校では変わり者扱い、親からも将来の夢を諦めて堅実な仕事に就くようにと説教されるばかり。そんなリアの唯一の理解者は芸術家を志す姉リーナ(リトゥ・アリヤ)だった。ある日、その姉が富豪の息子であるプレイボーイと恋に落ち、まさかの急展開で彼と結婚し海外移住することに。だが、彼の一族に不審な点を感じ取ったリアが独自に調査を開始すると、その結婚の裏にはとんでもない陰謀が隠されていることが判明。リアは姉を救うべく、友人たちとともに結婚式を阻止しようと立ち上がるのだが……。
引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv86167/)
◆見どころポイント◆
①ジャンルミックスが生む新鮮な映画体験
本作はアクション、コメディ、青春、さらにボリウッド映画へのオマージュが融合した、独特のジャンルミックスが特徴的です。
まず、リアが夢中になる「スタントウーマン」の要素を反映し、映画全体には華やかでユーモラスなアクションシーンがふんだんに盛り込まれています。主人公の暴走した妄想や大胆な悪だくみが、現実と非現実の狭間で予測不能に展開し、観客をぐいぐい引き込みます。アクションの振り付けやカメラワークは、漫画的な誇張と、実写ならではの臨場感が共存し、爽快で遊び心に溢れています。
加えて、イギリス映画らしい乾いたユーモアや皮肉、独特のテンポ感が随所に光ります。家族や親類たちによる“伝統的”なやりとりやコミュニティ内部のドラマにも、ボリウッド風なきらびやかなダンスや音楽が入り込み、心地よい違和感を生み出しています。
この多重構造によって、観る人は既存の青春映画や家族映画、あるいは移民映画の枠に収まらない斬新な体験を味わうことができます。
エンタメ性の高さと社会的メッセージ性のバランスが絶妙で、ジャンルを自在に横断する本作のスタイルは、監督ニダ・マンズールの独自性を際立たせています。
②主人公リアの成長と個性―反逆と葛藤のドラマ
『ポライト・ソサエティ』の核には、主人公リア・カーンの溢れるエネルギーと現代少女の葛藤があります。
ボリウッド的な派手さとヨーロッパ青春映画のクールさを兼ね備えたキャラクターのリアは、「スタントウーマンになる」という唯一無二の夢を抱きながら、厳格な家庭と社会の期待に抗います。
彼女の存在は、移民社会の「こうあるべき」という枠組みから外れたい、と願う若者のリアルな姿を体現しています。
映画では、リアが家族や親族からの圧力だけでなく、自分自身の不安や未熟さにも何度もぶつかります。幼稚な陰謀や突拍子もない“救出計画”など、リアの日常は常にトラブルと波乱だらけ。しかし彼女の無謀な行動の裏には姉リーナへの純粋な愛情や、女性が主体的に生きる意義を問う強い意志も感じられます。リアのキャラクター造形そのものが、この映画の骨格となっているのです。
また、妹としての独特な視点や、他の家族・同級生たちとの多層的なやり取りも見逃せません。日常生活の細部までリアリティと笑いに満ちており、リアをとりまく多文化環境の“息苦しさ”や“面白さ”が存分に描かれます。
③家族と伝統、女性のエンパワメントー社会背景を捉えたテーマ性
本作のもう一つの大きな魅力は、現代のイギリスにおけるパキスタン系移民コミュニティの家族像、そしてそこに生きる女性たちのあり方への鋭いまなざしです。
リアとリーナ姉妹が直面するのは、家の「しきたり」や「標準的な幸せ」への、周囲からの同調圧力です。
とりわけ、リーナが結婚話に引き込まれる流れと、それに抗うリアの姿は、「良き女性」「良き娘」として求められる伝統と現代社会とのギャップを浮き彫りにします。
映画の中で親世代、親族、一族のネットワークが執拗に描写され、観る者に「何のため・誰のために人生を選ぶのか」という普遍的な問いかけを投げかけています。
そして特筆すべきは、映画が説教臭くなることなく、あくまでエンターテインメントとしてこのテーマを処理している点です。姉妹の協力・反発、友情、夢への情熱といったポジティブな要素が前景化され、伝統と現代的価値観の対立をコミカルかつ爽やかに昇華しています。
最終的には、女性自身が自らの人生を選択し、周囲の枠組みをバカバカしいまでの力技でぶち壊す、そのエネルギー描写に惹きつけられます。
ラストに至るまで、“愛”と“自由”を巡る精神的な冒険の物語として強い余韻を残してくれます。
まとめ
『ポライト・ソサエティ』は、型破りな妹リアと彼女を取り巻く家族やコミュニティをめぐるドラマを、ジャンルの垣根を超えたポップな語り口で描き出しています。現代的なアイデンティティの模索や伝統との葛藤、そして姉妹の強い絆が、ウィットに富んだユーモアやアクションの中で鮮やかに浮かび上がります。エンターテインメントとしての面白さと、複雑な社会背景への鋭い洞察が融合した本作は、観る人の心を躍らせながら、家族や女性の自由について深く考えさせる作品です。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を