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東京ラスク社員であり大の映画好きな私 Haruが、「おやつのお供に観たい映画」をご紹介していくこのブログ。
映画について語りつつ、ラスクに合う楽しみ方もちょっと添えて。
ぜひ、ラスクとお気に入り映画で心ほどける時間をお過ごしください。
第12回では、20世紀イタリアを代表する作家ディーノ・ブッツァーティによる童話を、カラフルな色彩とユーモラスなキャラクターでアニメ化した映画を紹介します。
シチリアの山奥に暮らすクマたちが、あることをきっかけに人間の街へと下り、国を征服し、人間と共生していく姿が描かれます。
○シチリアを征服したクマ王国の物語(2019年製作)
スタッフ・キャスト
監督:ロレンツォ・マトッティ
ジェデオン役:トマ・ビデガン(柄本佑)
アルメリーナ役:レイラ・ベクティ(伊藤沙莉)
レオンス役:ティエリー・アンシス(堀内賢雄)
~あらすじ~
ある日、クマの王国の王レオンスの息子トニオがいなくなる。レオンスはクマの群れを引き連れて、人間の暮らすシチリアにトニオを探しに行くが、シチリアの大公は軍隊を率いてクマたちに奇襲をかける。
引用:MOVIE WALKER PRESS(https://press.moviewalker.jp/mv75011/)
◆見どころポイント◆
① 独特のビジュアルとアートワーク
本作最大の魅力は、唯一無二のアートワークです。
監督のロレンツォ・マトッティは、グラフィックノベル出身の著名なイラストレーターであり、そのセンスがアニメーション全編に活かされています。色彩は非常に鮮やかで、大胆な配色とミニマルな線、幾何学的な背景が特徴です。
物語の舞台となるシチリアの街並みから山岳地帯まで、デフォルメされた詩的な美しさで描写され、いわゆるハリウッドらしいCGアニメーションとは真逆とも言える、パステル画や絵本を眺めているかのような独創性に満ちています。
また、熊と人間の対比も、色使いやデザインの工夫により、ビジュアルだけで性質の違いが伝わるよう表現されています。
②童話とは思えないストーリーの奥深さと寓話性
本作の物語は大人にも深く突き刺さります。
単なる冒険・ファンタジーを超え、サスペンスと示唆に富むストーリーになっています。
人間の暴君を倒し、新しく王となったクマのレオンス。彼は解放者として喜ばしく迎えられるも、次第に統治者としての目は曇り、国は不安定になってしまいます。
クマたちを人間になぞらえて革命と革命後の腐敗を描いたストーリーは、現代の権力構造や社会的責任というテーマに対する普遍的な教訓を語っています。
さらには、異なる文化との共生の難しさと破綻も描いた残酷なストーリーともいえます。
ユーモラスでかわいらしいファンタジーアニメーションではありつつ、「異文化との対立」「自然と文明の関係」「権力と堕落」といった奥深いテーマを内包しています。
子ども向けに見せかけて、実は大人のための作品でもあります。寓意に満ちたセリフも多く、家族や社会について思いを巡らせるきっかけとなることでしょう。
③物語構造と語り部のしかけ
映画は「語り部(バルドゥス)」が舞台で物語を語る構成となっています。これは原作にも通じる手法です。
語り部が、観客やキャラクターたちに直接語りかける「物語の中の物語」という二重構造を取っています。そのおかげで観客は、物語の世界と現実世界の間を行き来するような感覚を味わえます。
語り部と聞き手という形で、観る人自身が物語に参加しているようになり、映画を単なる「消費物」として観るのでなく、自分自身の物語として捉えやすくしています。
また、原作にはいない少女アルメニーナを登場させ、破滅に気づく聡明で勇敢な彼女の姿を通して、世界への希望を託しています。
まとめ
『シチリアを征服したクマ王国の物語』は、独自のアートワークからストーリーの本質まで、すべてが新しいアニメーション映画です。子どもから大人まで楽しみやすく、かつ深い深い問いを残す稀有な作品です。ちなみに、作品時間が82分とコンパクトなのも、ちょっとした時間におススメなポイントです。
それでは、映画とともに 素敵なラスク時間を